今日で海水浴場は終わりだ。
海岸で散策しているおじいさんがガードに何か話しかけている。
聞こえないが、ねぎらいの言葉をかけたのだろう。

五時近くになると、多くのガードは監視所から出て海岸の方を見つめた。

五時になると監視長が放送を流し始めた。
目を赤くしながら今日で海水浴場シーズンが終わる事を告げた。

海の家の人は外に出てその放送を聞いていた。
放送が終わると拍手をした。

監視長は同じ年にこのクラブに入った人だ。
入った時彼はまだ高校生だったのに来年三月には大学を卒業する。
俺は今日、夜勤で監視に入る事が出来なかったが、彼の学生としての最後の三十分くらい写真に撮っておきたいと思い、浜に来た。
引っ越しや体調不良で例年と比べてあまり監視にはいれなかった。
今年は特別な夏に思えたから例年より沢山入りたかったのが本音だ。
終わりの挨拶の時、監視長や監視仲間が一人ずつ挨拶をしていた。
彼らが挨拶している間、監視長が高校のときから一緒に活動して来た事や、今年の監視仲間の活動を思い出していたら、なんか涙が出そうになった。その時に突然俺も挨拶するように監視長に呼ばれた。
今日は監視に入っていなかったので、心の準備もしていなかったし、話す内容を考えていなかった。
涙が出ないようにするのが精一杯でどんな挨拶をしたかよく覚えていない。
たぶん、とんちんかんな事を話したのだろう。情けない…。